5年1組1番 青木敦志 「カレンダーの赤い印」

ショート怪談

カレンダーの赤い印

青木敦志

最近気づいたけど、僕の部屋にはちょっと不思議な「何か」がある。

きっかけは、壁にかけられたカレンダーだった。

母さんが毎月新しいものを貼ってくれるそのカレンダーには、赤い丸で塾の日が書き込まれている。

火曜日と金曜日。

真面目に塾に通う僕にとって、それは当たり前の光景だった。

でも、ある日、気が付いたんだ。

来月のカレンダーには、まだ予定なんて書き込むはずもないのに、赤い丸がいくつかついていた。

そしてその赤い丸が木曜日にあった。

「……誰が書いたんだ?」

不思議に思ったけど、考えすぎても仕方ないと思い、忘れることにした。

その赤丸がついていた木曜日、本を返すために図書館に行こうとしたのに、急に腹痛が襲ってきた。

「今日はやめておこう」とベッドに横になっていた。

夜になると姉が部屋に入ってきてこう言った。

「今日、図書館前の交差点で事故があったんだよ。

トラックが信号無視して自転車の子が轢かれたんだって。

最初、あんたかと思ったんだから!」その瞬間、背筋が凍りついた。

翌朝カレンダーを見ると、その赤い丸は消えていた。

僕はますますカレンダーが怖くなった。

でも、次の赤丸が目に飛び込んできた。

その日は、学校の遠足の日。

今度はどうなるかと不安だったけど、結局その日は山で滑って転び、腕を強打した。

その後に見ると、また赤丸は消えていた。

姉に相談しても、冗談交じりに「自分で丸を付けてるんでしょ」なんて笑われる。

でもその後、姉の誕生日がカレンダーに細い赤丸で記されているのを見つけた。

細く赤い字で「梨花 誕生日」と書かれている。

そしてその日、姉は階段から落ちて足を骨折した。

本当に、なんなんだ、これは。

僕は震えながらカレンダーを見つめた。太くて鮮やかな赤丸が一つ、はっきりと描かれていた。

それにはこう書かれていた。

「敦志 誕生日」

青木敦志の姉 青木梨花

赤い丸が指し示すその日、階段から落ちて骨折した私。

痛みよりも、呪われたような運命を感じ、震えが止まらなかった。

けれど、それでも「次は敦志の番だ」という事実は、私をもっと不安にさせた。

「お姉ちゃん、どうすればいいと思う?」敦志が震えた声で尋ねてきたとき、私は言葉を失った。

カレンダーが示すものを止める方法なんて知らない。

だけど、私たちが何もしないまま黙って見過ごしていいわけがない。

その夜、私はひそかに敦志の部屋に入った。

赤い丸の描かれたカレンダーを凝視する。

そこには次の月の「敦志 誕生日」とあった。

それをどうにかして消したい──そう思い、消しゴムを握りしめる。

だが、消そうとするたびに異様な力が腕を引き戻すような感覚が襲った。

力が抜け、消しゴムが手から転がり落ちる。

その瞬間、カレンダーの赤い丸が微かに輝き、冷たい風が部屋を吹き抜けた。

「これ、本当にただのカレンダーじゃない…」恐怖が膨れ上がる。

翌朝、私は決心した。「敦志、この部屋には近づかないで」と告げた。

弟を守れるなら、何だってする。


けれど、この不気味な現象の核心を突き止めるには、どうしても解決の糸口が見つからない。

敦志の誕生日まで、あと1ヶ月…。

荒川太耀

敦志が不思議な話を聞かせてくれたのは、体育の時間の後だった。

汗をかいた顔にちょっとした緊張感が混じってて、「ねえ、太耀、ちょっと聞いてくれる?」って話し始めたんだ。

「僕の部屋のカレンダー、変なことが起きてるんだ。」

彼は真剣な目をしていたけど、僕は「それ、ただの勘違いじゃない?」って笑っちゃった。

だけど、敦志が続けた話は、まるで怖い物語みたいだった。

来月のカレンダーにまだ誰も書き込んでいないはずなのに、赤い丸がいくつかついてたって。

それも塾の日じゃなくて、その後、その赤い丸の日には必ず何かが起きるんだってさ。

最初は信じられなかったけど、敦志は事故や姉の足の骨折の話を真剣にしてきた。

その赤い丸の日の出来事を考えると、確かにただ事じゃない感じだよね。

僕はちょっと背筋が寒くなった。

敦志が「姉に相談したら、あのカレンダーはおかしいって言われた」って話を聞いて、本当にそんなカレンダーがあるのか?って興味が湧いたけど、それと同時に怖くなったんだ。

敦志が最後に言ったのは、「次の赤い丸は僕の誕生日なんだ。」

それを聞いた瞬間、僕は冗談半分で「カレンダー燃やしちゃえばいいじゃん!」なんて言ったけど、本当は内心めちゃくちゃ怖かった。

その後、敦志がどうしたのか気になるけど、それを聞くのも怖い気がして、あんまり触れないようにしてるんだ…。

なんだか、本当に怖い話を直接体験してるみたいだったよ。

僕には、カレンダーの謎を解く勇気はないけど、敦志が無事でいてくれることを願うばかりだ。

敦志からさらに話を聞いたのは、あの不気味なカレンダーを燃やした後だったんだ。

その日、敦志と姉が決心して、ついにカレンダーを取り外し、庭に持っていったらしい。

姉がマッチを取り出して、「これで終わりにしよう」と言った瞬間、敦志は一瞬ためらったと言う。

けれど彼女の手はしっかりしていて、燃え上がる火の中でカレンダーは徐々に黒く焦げていった。

「それで、解決したんじゃないの?」僕は敦志の顔を見ながら聞いた。

けれど、彼の表情は何とも言えない暗さを帯びていた。

「燃えた後も…赤い丸だけが残ったんだ」敦志がそう呟いた時、僕は全身に寒気が走った。

それは、単なる焼け焦げの痕跡だったかもしれない。

でも敦志が言うには、形が変わらずに浮かんでいたらしい。

さらに奇妙なのは、それからの数日間だった。

カレンダーが消えたことで安心したのも束の間、敦志の誕生日が近づくにつれ、彼の部屋で聞こえないはずの音が鳴り始めたらしい。

古びた紙を擦るような音。

夜になるとそれはより大きく響いて、「気が狂いそう」と敦志が話してくれた。

それを聞きながら、僕は何も言えなかった。

ただ、敦志の誕生日が終わるまでは、彼のそばにいることを決めた。

でも、その日が来ても、何も起こらなかった──いや、そう思っていた。

次の日の朝、敦志は学校に来なかった。カレンダーを燃やしても、彼の運命は変わらなかったのかもしれない…。

そして、気になるのは僕の部屋にある何気ないカレンダー。

ちらりと見ると、赤い丸が一つだけ…。僕は自分の心臓の鼓動が速くなるのを感じた。

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