5年1組17番 山崎華映美『SNS』

ショート怪談

SNS

山崎 華映美

今日も急いで帰る。

宿題を後回しにして、スマホを手に取ると、通知が光っていた。

誰かがコメントしたのかな?

それとも新しいフォロワー?

SNSに夢中な私は、すぐに通知を確認する癖があるんだ。

そこで見つけた、不気味なメッセージ。

「この投稿に“いいね”を押してみて。」

不思議なアカウントだった。そのプロフィール写真には、私にそっくりな子が写っている。

まるで鏡を覗いているような感じ。

どこか違和感があった。

怖い気もしたけど、好奇心には逆らえない。

私は“いいね”を押してしまった。

瞬間、心臓が一瞬止まったような感覚。

そしてすぐに新しいメッセージが届く。

「あなたと入れ替わりたい。あなたになりたい」

意味不明だし、気味悪い。

でも、試しに返信してみようと思った。

「いいよ、入れ替わろう。」

言葉を打ち込むと、スマホが暗転。

画面に浮かび上がる文字。

「ありがとう。」

次にスマホの画面が変わり、笑顔の“私”がそこに写っていた。

でもそれは私じゃない。

“私”だけど“私じゃない”。

何かが崩れた感じ。

食卓に呼ばれたけど、なぜか今日は食べる気がしない。

姉が声をかけてくる。「ご飯、食べないの?」

その声に返事をするけど、薄っぺらい感じ。

「うん。」姉が私をじっと見つめている。

いつもなら言い返しそうなタイミングなのに、私はただじっとしているだけだった。

「華映美…どうしたの?」姉の問いに、自然と笑顔を作る。

「キョウカラ ワタシ ガ カエミ…」

足立 玲依莉

私は足立玲依莉。

華映美とはいつも放課後におしゃべりする仲なんだ。

でも、最近の華映美、なんかちょっと変。

急に静かになったし、あの明るい笑顔もどこかぎこちない感じ。

その日、休み時間に彼女に声をかけた。

「華映美、どうしたの?なんか元気ないみたいだけど。」

彼女は一瞬目をそらした。

「ううん、なんでもないよ」と笑顔を作るけど、その笑顔にはどこか不気味な違和感があった。

放課後、一緒に帰ろうと誘ったけど、華映美は「ごめん、急いでるんだ」と言って、急ぎ足で先に行ってしまった。最近はいつもこんな感じ。

翌日、華映美の様子はさらに変わっていた。

授業中もどこか上の空。

私やクラスメイトが笑いかけても返事は薄っぺらくて、何かに囚われているみたいだった。

昼休み、私は勇気を出して彼女のそばに座った。

「華映美、本当にどうしたの?最近、変だよ。」

すると彼女はスマホを机の上に置いて、それを指さした。

「この中にね、私がいるの。」その言葉に背中が冷たくなる。

「それってどういう意味?」と問いかけたら、彼女は突然笑った。

その笑い声はいつもの華映美のものじゃなかった。

「キョウカラ ワタシ ガ カエミ…」

私は思わず後ずさりして、スマホを見た。

それには華映美の笑顔が映っていたけど、その表情はまるで別人のように冷たかった。

「玲依莉、私を助けて。」その声がどこかから聞こえてきた気がした。

叫びたい気持ちを必死で抑え、教室を飛び出した。

華映美に何が起きているのかはわからないけど、このまま彼女を放っておくわけにはいかない。

勇気を振り絞り、もう一度話を聞こうと決意した。

山崎華映美の父 山崎浩二

50歳になった今でも、あの日のことは忘れられない。

小学生だった頃、幼なじみの香織、隆介、そして光一と過ごした夏の日々。

そして、あの「事故」の記憶。

最近、娘の華映美が様子がおかしい。

いつも明るい娘の笑顔がどこかぎこちなくなり、声には覇気がない。

ある日、足立玲依莉さんのお母さん、香織から電話があった。

「玲依莉も最近変なの。ねえ、浩二くん、覚えてる?光一のこと…」

香織の言葉に胸がざわついた。彼女の話を聞きながら、光一の姿が頭に浮かぶ。

白いシャツを着て、川の中洲にいる亀をどうしても取りたいと言い張っていた光一。

危ないからみんなで必死に止めたのに、翌日、一人で川に行って…そして。

翌朝、隆介も呼び出した。

香織、隆介、そして俺の3人は一つの結論にたどり着いた。

太耀の周りに現れている影、華映美や玲依莉の異変、すべてがあのときの光一に繋がっていると。

放課後、3人で公園のベンチへ向かった。

そこには光一の手紙が置かれていた。まだ子どもの字で、こう書かれていた。

「ともだちになろう。ずっといっしょにいよう。」

俺たちは決意した。このままでは華映美も玲依莉も太耀も光一の囚われになる。

あの時の責任を果たすため、光一のお墓参りに行こうと。

その日の夕暮れ、俺たちは家族を連れて光一の墓前に集まった。

線香の煙が静かに漂う中、香織がそっと言った。「光一、ごめんね。私たちが守れなくて…」

すると、風が優しく吹き抜け、どこか懐かしい声が聞こえた気がした。「ありがとう。」

その後、華映美も玲依莉も太耀も少しずつ元の姿を取り戻した。

光一はきっと、ようやく自分の場所を見つけたのだろう。

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