もし、10年後の週刊少年ジャンプを読めたら?
『タイムパラドクスゴーストライター』は、まるで上質な映画を観ているかのような作品です。
物語は冒頭2ページで核心を語り尽くします。
「俺の家の電子レンジに10年後の『週刊少年ジャンプ』が転送されてくるようになった」という奇想天外な設定。
それが主人公たちの人生を一変させるのです。
漫画家志望者に年齢制限はありませんが、良い作品を生み出せない限り、何も得られず生活は困難。
この現実は夢に期限を設ける将棋の奨励会の年齢制限に似ている気がします。
確かに非情ですが、才能がない人に「あきらめろ」と伝える一つの救済措置とも考えられます。
物語の気になる部分
- 初めて転送されたジャンプが無くなったと騒いでいた場面(p42)がある一方で、後日には付箋がたくさん貼られた状態で手元に戻っている(p120)。これは不思議!
- 高知から上京した藍野伊月が無名の漫画家・佐々木哲平を簡単に待ち伏せに成功する場面(p83)。漫画だから許容範囲、ということでしょうか。


しかしながら、全体を通じて読みやすく、ストーリーの魅力にぐいぐい引き込まれます。
そして1巻終盤の展開には驚嘆!これだけでも本作の凄みが伝わります。
登場人物
佐々木哲平
哲平は「週刊少年ジャンプ」で連載を夢見る漫画家志望者。

しかし特に個性や明確なテーマを持たず、ただ多くの人に喜ばれる作品を描きたいと願っています。
かつて漫画賞で佳作を取ったものの、それ以降は振るわない日々。
もう辞めようかと思った矢先、彼のアパートに落雷(?)。
その影響で電子レンジに10年後のジャンプが届くように。
葛藤を抱えつつも、他人のアイディアである「ホワイトナイト」を発表し連載を決意。

しかしその盗作という事実を誰にも言えず、罪悪感を抱えながら描き続けます。
- 「自分は本物のホワイトナイトと同じクオリティを維持できるのか」
- 「10年後のジャンプが突然届かなくなるかもしれない」という恐怖にも直面します。

藍野伊月
10年後に「ホワイトナイト」を連載する本来の作者であり、高知県在住の高校2年生。

不登校ながら、部屋にはジャンプや作品の設定資料が所狭しと並んでいます。
不思議なことに、盗作されたという認識はなく、同じ価値観を持つ誰かが偶然同じ作品を発表したと考えています。
作中で一番ポジティブで心優しい存在です。
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